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PIWIS診断
中古ポルシェメンテの実態

ポルシェの故障診断機「PIWIS」とは

PIWISはポルシェ専用の診断システム

「PIWIS(ピウィス)」は、Porsche Integrated Workshop Information System の略称で、ポルシェ専用に設計された故障診断・制御調整システムです。911をはじめとするすべての現行ポルシェ車に対応しており、正規ディーラーや一部の専門整備工場で使用されています。

一般的なOBD2スキャナーでは読み取れない専用エラーコードの取得や、高度な電子制御系統の診断、さらにはアクチュエーターテストやコンポーネントの初期化作業なども可能です。911のように、複雑な制御ユニットを数多く搭載している車種では、PIWISによる診断が不可欠といっても過言ではありません。

とくにモデルチェンジを重ねた近年の911では、電装系のトラブルがメーター表示や走行性能に直接影響を与えるケースが増えており、信頼性の高いスキャンツールの使用が推奨されています。PIWISはポルシェ本社が開発・提供しており、定期的なアップデートを通じて、最新モデルにも迅速に対応できる体制が整えられています。

PIWISで診断できる主な項目

PIWISは単なるエラーコード読み取り装置ではなく、車両全体の状態を包括的に把握することができます。対象となるユニットは多岐にわたり、エンジン制御系、トランスミッション、ABS、エアバッグ、ステアリングアシスト、パワーウィンドウ、ドアロック、ライト系統などが含まれます。

特筆すべきは、ユニット単位での「ライブデータ表示」が可能な点です。たとえば、エンジンの吸気温センサーやスロットルポジションの変化をリアルタイムで表示し、異常値の確認や整備後の調整がその場で行えます。また、サービスインターバルのリセットや、DME(デジタルモータエレクトロニクス)の再学習も可能です。

さらに、近年のモデルではADAS(先進運転支援システム)の調整もPIWISを通じて行うようになっており、ただのトラブル診断を超えて「制御再構築のプラットフォーム」としての役割を持つようになっています。

従来の診断機では不可能だった細かな調整にも対応しているため、ポルシェの状態を正確に把握したい場合には、PIWISの使用が前提となるのが実情です。

PIWISを使っている店舗をどう選ぶか

正規ディーラーはもちろん、ポルシェ専門店の中にはPIWISを導入している整備工場もあります。ただしすべての輸入車整備工場がPIWISを持っているわけではなく、あくまで「ポルシェ専門性の高い店舗」に限られます。

導入には高額なライセンス費用と専用端末が必要であるため、汎用OBD機器での対応にとどまっている店舗も多いのが現状です。そのため、診断や整備を依頼する前に、「PIWISを使用した診断が可能かどうか」をあらかじめ確認しておくことが大切です。

また、初期化やコーディングが必要となる作業(バッテリー交換後の登録や、トランスミッションの学習値リセットなど)を行う場合には、PIWISが使える店舗に依頼することで、安心して作業を進めることができます。

ポルシェは高精度な制御技術が採用されている一方、診断の精度が作業の品質に直結します。トラブルが表面化する前に、定期的にPIWIS診断を活用し、車両状態を把握しておくことが、長く安心してポルシェに乗るためのコツといえるでしょう。